公益社団法人 日本水環境学会
日本水道新聞掲載コラム > 水環境懇話会 活動成果

連載 水環境懇話会の活動と成果

〈第3回〉わが時代の活動②

元代表幹事 山口 太秀氏
培った人脈が今でも

 私が水環境懇話会(以下、懇話会)に参加することになったきっかけは、メタウォーター設立前の富士電機に勤務していた時代にお世話になった星川氏(現・日本水環境学会事務局長)からお誘いを受けたことです。水環境分野における若手技術者の交流の場を設けたいとの趣旨に大賛成して仲間に入れてもらいました。
 というのも、懇話会発足当時は、コンプライアンスを気にするあまりに、特に事業体と企業の技術者同士が議論する機会が少なくなっていたと感じていたからです。私が入社した当時は、産官学の交流はもう少し活発だったように思います。
 例えば当時水質計の開発に携わっていた私が、クリプトスポリジウム対策に対応するべく微粒子カウント式高感度濁度計の開発に着手したことを発表した際、事業体の方から「評価するから持ってくるように」との問い合わせがすぐにありました。今では、1社単独の利益供与に当たるということで、評価していただくにも、こうすぐには話は進みません。
 また、懇話会が発足する10年ほど前のことですが、眞柄先生を中心として開催されていた水質問題研究会など、さまざまな事業体や企業の方々と議論させていただく場があったことも私にとっては励みになる経験でした。特に、クリプトが漏出したらわれわれはどうすればよいのかと、事業体の方が真剣に悩んでおられる姿を通して、業界のニーズを肌で体感できたことを覚えています。
 そこで、懇話会の話があった時に、ぜひとも若い世代でも、私と同様の経験ができるといいなと考えたわけです。活動では産官学の水環境分野に関わる方を講師としてお呼びしたのですが、過去の私と同様、普段は自身が関わる業務で精いっぱいの多くの技術者が視野を広げるのに役立ったと思います。また、講演が終わった後、講師を囲んでの一杯飲みながらの本音話は大いに盛り上がり、親交をより深めることができました。
 失敗談としては、当時水環境学会の会長と副会長であった花木先生と国包先生をお招きして特別講演会を開催した時に、司会を務めた私が花木先生の長い所属名称「東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻サステイナビリティ学連携研究機構」をうまく読み上げられなかったことなどがあります。
 発表していただいた国包先生が、花木先生の講演に触れられた時に「東京大学サステイナビリティ…何とか何とか…何だっけ?」と話された時には会場が笑いに包まれ、ほっとしたと同時に先生の愛情を感じ、嬉しくなったことはいい思い出になりました。
 私にとっては、このような懇話会の活動を通して培った人脈が今でも役立っています。例えば、弊社が提供しているWBCというクラウドのサービスを用い、住民や水道OBの力を借りて広域の水質管理をしたいというアイデアがあった際、初代代表幹事の田畑さん(いであ)や環境省の熊谷さん(当時)に気兼ねなく意見を伺うことができたり、関東学院大学の鎌田先生に開発途中の製品・技術の評価を委託するきっかけをつくってくれたのもこの懇話会です。この人脈は、私の生涯の宝物です。
 最後になりますが、若手技術者の皆さんには懇話会に参加いただき、産官学の交流を深めるとともに、老朽化した設備の更新、熟年技術者不足など、かつてない課題を抱えている上下水道のあるべき姿を論じていただきたいと思います。
 水環境に関わりたいというビジョンを持って社会に出た者には、わが国や世の中のために貢献したいという思いが少なからずあったはずです。
 特に企業での多忙な業務に追われその初心を忘れてしまった皆さん! 会社に閉じ込もってパワーポイントを何枚作っても新しい商品・サービスはなかなか生まれません。ぜひ、懇話会で世の中のニーズを敏感に感じとってください。お待ちしております。

(メタウォーター事業戦略本部 R&Dセンター基盤事業開発部浄水プロセス開発グループマネージャー)

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