第41回水環境懇話会 議事録(平成28年12月19日)
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第41回水環境懇話会では、(株)堀場アドバンスドテクノの山内 進氏をお招きし、アンモニア態窒素計や、その他オンライン水質センサの最新動向などについてお話頂いた。その後、質疑応答が行われた。
- 1.経歴紹介
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1981年に株式会社 堀場製作所に入社し、2000年まで水質計測器の開発・設計に従事された。2001年に堀場グループの水事業再編により、株式会社 堀場アドバンスドテクノに異動され、オンライン形水質計の開発に従事された。2011年からは製品企画部門にて、水質計測分野のマーケティング・新製品プロモーションを担当されている。
- 2.講演及び討論内容
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講演内容として、①HORIBAグループの会社概要、②アンモニア態窒素計、③オンライン水質センサの最新動向、④製品開発における実行マインドについてご説明頂いた。
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①HORIBAグループの会社概要
- HORIBAグループの事業分野について、動画を含めご説明頂いた。
- 5つの事業(自動車計測システム機器、環境&プロセスシステム機器、医用システム機器、半導体システム機器、科学システム機器)が柱となっている。
- フランスでは血液・尿の分析会社、イギリスでは自動車関連会社など、海外におけるM&Aの実績が多数ある。
- 2017年1月1日より、水質・液体分析機器事業を㈱堀場アドバンスドテクノに集約する。
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②アンモニア態窒素計
主に下水処理プロセス用途として、アンモニア態窒素計の技術、測定原理、計器の特徴について、実物も交えながら、ご説明頂いた。
- アンモニア態窒素の測定法として、イオン電極法、吸光光度法、電位差法、イオンクロマトグラフィがあり、オンライン測定にはイオン電極法を採用している。
- アンモニアセンサは、主にカリウムイオンによる妨害影響を受けやすいが、カリウムイオン以外による影響は無視できる。
- センサはアンモニウムイオンチップ、カリウムイオンチップ、比較チップから成り、カリウムイオンによる妨害を補正している。チップは簡単に取り外し可能。
- センサの耐久性を向上させるため、応答膜の上にPTFE素材の保護膜を形成した。
- センサに連続的に70 kHzの超音波を当てることで、汚れを防止する。
- イオン電極内部液を最適化することで、長期安定性を向上させた。改良前は約100日間の計測で、アンモニア濃度5 mg/L相当の測定誤差が生じていたが、改良後は誤差が生じない。
- センサ劣化を内部で監視する機能があり、劣化度を2段階に分け、それぞれの段階で警報を発する(1段階目はセンサ交換の予告警報を発するが測定可能であり、交換約1か月前の目安、2段階目は警報を発するとともに測定停止)。応答までに15分程度を要すると、劣化が進行している目安となる。
- 簡単に手分析値への合せ込み校正が行える。
- 東京都下水道局との共同研究など約10カ所におけるフィールド試験で現場適合性を評価済みである。
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③オンライン水質センサの最新動向
その他計器(pH計など)、クラウドを利用したオンラインソリューションなどについてご説明頂いた。
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④製品開発における実行マインド
堀場グループの製品開発における心得や、講師の成功事例などをおもしろおかしくご説明頂いた。
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質疑応答では、測定技術や現在のニーズに関することなど、多岐にわたり活発な議論がなされた。
一部として、以下を挙げる。- アンモニア態窒素計は、浄水施設の原水(1 mg/L未満程度)にも利用できるか。
- マンガンイオンを連続測定できる計器はあるか。
- 塩素以外の消毒剤を使用し、残留薬液濃度を計測したいというニーズはあるか。
- 反応槽内でアンモニア態窒素計を用いるとき、反応槽末端(アンモニア濃度が低い)の方がセンサ寿命が短いのはなぜか。
講演の様子 |