公益社団法人 日本水環境学会
日本水道新聞掲載コラム > 水環境懇話会 活動成果

連載 水環境懇話会の活動と成果

〈第1回〉 立ち上げの背景と現状

元日本水環境学会産官学協力委員 伊藤 光明氏
若手交流で学会活発化へ

 日本水環境学会では平成15年に水環境懇話会を立ち上げ、若手技術者が交流する場を提供、人的ネットワークの構築、若手技術者の資質向上などの成果を上げている。 人口減少や効率化に伴う職員数の減少などにより、技術継承の問題がクローズアップされ、上下水道の未来を担う人材を育成していく必要がある中で、同懇話会の活動に注目が集まっている。 そこで、懇話会立ち上げの背景やこれまでの経過を振り返り、今後の展開を模索していくキャンペーンを企画した。 第1回は懇話会設立時に産官学協力委員を務めていた伊藤光明・いであ常務執行役員営業本部長/除染事業推進室長に懇話会立ち上げの背景などをお聞きした。

■諮問機関が提言

 水環境学会では産官学協力委員会などを通じて、産官学の協調を図るための活動を展開していましたが、団体正会員(民間企業)にとってメリットのある学会活動が十分に行われていませんでした。そこで、この現状を打破するため、当時の大垣眞一郎会長の私的諮問機関として産官学協調諮問会を設置しました。
 14年2月から4回にわたる会合を経て作成した報告書では、産官学協調のための具体的な活動として、流域水環境ソリューション研究委員会の設立、水環境懇話会の定期開催が提言されました。
 この提言の背景には、すでに産官学協力委員会では、専門家による講演などを行う「水環境サロン」や「施設見学会」を開催していましたが、参加費が高く開催頻度が低いため、マンネリ化していたことがあります。
 そこで、若手の研究者や技術者を対象に、より手軽な形式による講演会や意見交換会を1~2カ月に1回程度の頻度で開催し、若手のネットワークを構築することは、学会の魅力を高め、産官学の協調を高める上で重要と考え、15年10月にアサヒビールの工場で開催された施設見学会の際に発足集会を開催しました。その場で幹事を募集して、最終的に現在のいであ、住友重機械エンバイロメント、水道機工、明電舎、メタウォーターの5社から立候補があり、本格的な活動がスタートしました。

■若手の参加を促す

 入社10年に満たない社員が、社の垣根を越えて人脈を構築していくことはほとんどありませんし、仕事に直接関係のない勉強会等に参加するのは難しいでしょう。人脈を構築することは仕事の幅を広げることができるし、将来の役に立ちます。また、若手の会員が学会活動に積極的に参加すれば、学会が活発化するとも考えました。
 懇話会の運営に当たっては若手社員が参加しやすいように心を砕きました。例えば、少し早退すれば参加できるよう夕方からの開催とし、学会事務局で20人強の規模にすることで参加費用も無料にしました。終了後には講師を交えた懇親会の席を設け、少人数でざっくばらんに議論することで、若手技術者の育成とネットワークの構築に寄与してきています。

■次代を担う人材が

 今後は次代の学会を担う人材が懇話会参加者から出てきてほしいですね。これからは今まで以上に産官学の連携が求められますが、将来の学会を支える人材がいなければ産官学の協調は成り立ちません。特に学は教授から准教授などと人脈がつながっていきますが、産は一度切れてしまうと後継者がいない場合もあり、何とか人脈をつないでいく必要があります。
 懇話会は40代以下が中心になっており、立ち上げから10年しか経過していないため、懇話会参加者で学会の理事や運営幹事を務めている人はいませんが、懇話会の上部組織である産官学協力委員会の委員を務めている人はおり、当初の狙いは達成しつつあるように感じています。今後も懇話会を継続的に開催して、学会の将来を担う人材を輩出する場になって欲しいと願っています。

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