第32回 水環境懇話会(平成25年2月27日)
- 第32回水環境懇話会は、メタウォーター株式会社の上野氏と、いであ株式会社の岩本氏をお招きし、各講演者の最近の取り組み、課題と挑戦に関してご講演頂いた。その後、質疑応答を行った。
- 「持続可能な水環境を実現するクラウド型プラットフォームの活用」
- 1.経歴紹介
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富士電機株式会社に入社後、長年、電機技術業務に携わり、2008年4月に、富士電機水環境システムズ株式会社と株式会社NGK水環境システムズが合併し、メタウォーター株式会社が設立された後は、技術企画、ウォータービジネスクラウド(以降、WBC)開発業務等に従事されている。
- 2.講演及び討議内容
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「メタウォーターは水業界のプラットフォーマーになる。」というインパクトのあるお言葉から講演が始まる。まずは、WBCのネーミング。2011年、日刊工業新聞社主催の「第22回読者が選ぶネーミング大賞」ビジネス部門で第3位に輝く等、業界以外からの知名度もある。
水道事業の財政難や水道事業体の熟練技術者不足をうけて、事業の包括化・広域化を推進する必要があり、その1つの解として、ICT(クラウド)技術が有効であるとお話頂いた。また、日本企業の水ビジネス海外戦略という観点からも、ICT技術は有効であり、日本企業が保有していない運営維持管理のノウハウ・ツールをICT技術で補完できるのではないかとご提案頂いた。
メタウォーターのICTプラットフォーム:WBCについて、当日のトピックとして4つのコンテンツの紹介があった。
- 広域監視システム
- アドレス(機器の所在を認識する仕組み、現状の設備台帳に位置情報を付加したようなもの)
- 写真蓄積(施設および機器の良い状態と悪い状態をフォトライブラリーとしてまとめる。従来の報告書形式であると、執筆者の言語能力により、状況把握が難しい場合もある。)
- コミュニケーションツール(上記3つのツールを使用するための下支え)
海外の水メジャーもまた、地理情報、設備維持管理、運転プロセス最適化等の同様の独自管理ツールをもっており、WBCが目指すべき目標である。
質疑応答では、海外の水メジャーが何故上記3つの管理ツールを作ったのか。その問いを考えることによって、WBCが目指すべき方向が見えてくるのではないか。という質問があった。
またWBC等のICT技術に関して、顧客や業界全体がどこに価値を見出すか、現在まだ不明瞭な側面もあるために、ステークホルダーと共に発展させていきたいとのコメントがあった。
- 「コンシューマ向け防災気象情報提供の取り組み」
- 1.経歴紹介
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いであ株式会社に入社後、営業管理部門を経て気象情報を提供する業務に従事されている。現所属の、“バイオクリマ”とは、バイオ(生物、生命bio)+クリマ(気象climate)の造語であり、学際領域では生気象学と訳される。いであは創業時に民間初の気象予報会社からスタートしたが、バイオクリマ事業部では、生気象の知見を活かすことにより、単なる気象情報の提供配信だけではなく、健康予報や生活予報をはじめとして、疫病の予防対策、快適性などとを組み合わせたサービスを提供している。
いであ株式会社の大半の部署は官公庁からの委託業務を受注している一方で、バイオクリマ事業部は一般民生向けに気象情報サービスを提供する事業主体であることから、社内においては民生市場開拓のベンチャー的な位置付けにある。
- 2.講演及び討議内容
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気象学的な基礎知識(何故、雨が降るのか、ゲリラ豪雨の仕組み等)から、天気予報アプリ開発まで、多岐に亘る話題を提供して頂いた。また、レーダー観測の空間分解能向上、次期気象衛星の活用、高解像度数値予報モデルの開発等の、気象予報技術の最新動向に関してもご講演頂いた。
コンシューマ向けの防災気象情報の提供として、スマートフォン用のアプリ開発も行っているとのこと。共同事業者とともに自社競合調査等を行い、商品イメージや既存アプリ調査、販売方法のマーケティングを実施し、市場投入後の顧客サービス体制構築や製品メンテナンス、収益スキームの策定を行うなど、事業主体ならではの話をご紹介頂いた。
上野氏の発表の様子 | 岩本氏の発表の様子 |