公益社団法人 日本水環境学会
水環境懇話会 活動報告

第40回水環境懇話会 議事録(平成28年7月8日)

浦田 美由貴 氏
東亜ディーケーケー株式会社 開発技術本部 水質技術部

第40回水環境懇話会では、東亜ディーケーケー(株)の浦田美由貴氏をお招きし、水質モニタリングの新技術と災害時の緊急対応についてお話頂いた。その後、質疑応答が行われた。

1.経歴紹介

1984年に東亜ディーケーケー株式会社に入社し、当時の電気化学計器部門に配属されて電極の開発に携わった。その後、水質・大気・排ガスに関する経験を積み、20年ほど前より水質計の開発を担当されている。

2.講演及び討論内容

講演内容として、①水質測定の歴史、②水質モニタリングの新技術、③災害時の緊急対応、の3点についてご説明頂いた。

①水質測定の歴史
  • 我が国における水環境問題の歴史を踏まえて、水質測定や自動計測がどのように進歩してきたかご説明頂いた。
  • 成分分析における自動計測の位置付け、自動計測器の構成や種類に関して概略をご説明頂いた。
②水質モニタリングの新技術

水質モニタリングに関する新技術として、4つのトピックについてご説明頂いた。

  • 1. 多項目測定
    • 濁度、色度、pH、残留塩素、電気伝導率等の複数の項目を1台で測定するものが多項目水質測定機である。
    • 従来は複数のセンサーをひとつの箱に収めたもので比較的大きいサイズだったが、近年は小型化しており、ひとつのセンサーで複数項目を測定する装置も開発されている。
  • 2. 高感度測定
    • 近年では測定対象成分が低濃度化していること、測定の目的が常時監視からコントロールのための指標にシフトしていることから、より高感度な測定装置が要求されている。
    • 精度を高めるために、残留塩素計ではセンサーを高感度化するとともに、セラミックビーズによる研磨等により汚れの影響を極力少なくした。
  • 3. 省試薬測定
    • ランニングコストの低減やメンテナンス工数の削減、環境負荷の低減を目的として省試薬なセンサーが要求されており、省試薬な多項目測定機が開発されている。
  • 4. オンサイト測定
    • 従来の定置型集中監視による水質測定は、測定装置が集中しているため一括でメンテナンスが可能というメリットはあるが、採水箇所から測定装置までの流路でのタイムラグがある等の課題があった。
    • オンサイト測定は配管設置が不要であり、タイムラグなしで測定できる点が優れている。残留塩素計や高感度な油膜検知器が現場で活用されている。
③災害時の緊急対応

災害時に想定される事態について、どのような緊急対応策が導入されているかご説明頂いた。

  • 商用電源の停止に対してバッテリー駆動の水質モニターが開発されている。商用電源が停止してから72時間の連続運転が可能である。これにより、災害時の遠隔監視が可能となり、異常発生地点をいち早く検知することができる。
  • サンプリング配管等の破損で従来の残留塩素計が使用できない場合は、浸漬型の残留塩素計が活用できる。バッテリーを用いた駆動も可能であり、測定したい場所にハンドキャリーで移動してオンサイト測定できる。
講演の最後に、水質測定に関する今後の展望についてご意見を頂いた。
  • 自動測定装置への需要は今後さらに高まると思われる。
  • 分析対象は低濃度、高濃度に二極化している。中国や東南アジアでは、大気汚染や水質汚濁が問題となっているため、規制強化により高濃度の測定装置の需要が高まっている。
  • 測定結果を適切に活用して評価、解析するための技術が重要度を増している。
  • 標準液等の国際標準化が進むと思われる。
質疑応答では、センサーの精度や測定原理、現場が抱える課題とその対策、自動測定の国内外での動向等、多岐にわたり、活発な議論がされた。
講演の様子
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