第43回水環境懇話会 議事録(平成29年9月22日)
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第43回水環境懇話会では、北海道大学の山本雅人教授をお招きし、人工知能(AI)の概略と環境分野での活用に係る展望についてお話頂いた。その後、質疑応答が行われた。
- 1.経歴紹介
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北海道大学で博士後期課程を修了され、現在は北海道大学大学院の情報科学研究科で教授をされている。研究室では「生命知能の理解と創造」をテーマに研究されており、人工知能(AI)、最適化、ゲーム情報学等を専門にされている。バックギャモンの元日本チャンピオンであり、またAIによるカーリングの戦術支援を行うなど幅広い分野で活躍されている。
- 2.講演及び討論内容
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AIの歴史と概略、深層学習の基礎、環境分野におけるAIの活用についてご講演頂いた。
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①AIの歴史と概略
- AIの発展は深層学習(Deep Learning)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の発展による影響が大きい。
- 囲碁のような対戦競技ではAI同士で何万回もの対戦を行い学習する。2016年には囲碁のトッププレイヤーの1人に勝利した。
- 芸術分野でもAIが活用されている。プロの絵画や曲を学習することでAIによる作画、作曲が可能となっている。
- このようにAIが活躍するジャンルは増えているが、一方でAIにできることは限られているのが現実である。例えば、教師データとしてラベル(正解)が必要であり、正解を人間が定義しなければならない。
- Deep Learningは分類問題、画像を扱った問題が得意であるという特徴もある。また、一般的には学習には数万~数百万程度の大量のデータが必要となる。
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②深層学習の基礎
- ニューラルネットワークとは脳の神経細胞(ニューロン)の働きと同様の現象を人工的に表したモデルである。脳では学習が進むとシナプスの結合強度が変化する。つまり同じ行動を繰り返すとその行動に慣れて行動できるようになる。ニューラルネットワークを構成するニューロンは学習を多数繰り返すことで、それぞれの入力に重み付けが設定され出力されるモデルが構築される。ニューラルネットワークはこのニューロンのモデルが多層化したもので、入力からいくつかの中間層を経て出力される。
- 中間層のニューロン数が変化することで必要な学習回数と計算負荷が変化する。Deep Learningでは中間層を10~15層程度設ける。
- ニューラルネットワークが昨今のAIに至るまで、Deep Neural Network(DNN)や畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等の技術が開発されて活用されている。
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③環境分野におけるAIの活用
- 環境分野におけるAIの活用例はほとんどない。ビッグデータを用いた統計解析をAIと称する事例はあるが、統計解析とAIは異なる。
- 数少ない事例として、カメラと赤外線センサーを用いた廃棄物のロボットによる選別事例や、航空写真を用いた震災時における倒壊家屋数の推定が挙げられる。
- 環境分野でAIを活用するための課題として、正解データを与えなければならないこと、膨大なデータが必要であること等が挙げられる。また、AIが答えを導き出した理由が説明できない点も環境分野に活用する場合の課題といえる。
- 質疑応答では、AIの学習方法や活用方法に関する活発な議論がなされた。
講演の様子 |